状況を共有する

ビジネスには不確実性が付きものですね。中でも「市場環境的なリスク」「取引上のリスク」は、ビジネスの生命線・売上に直結する重大なリスクです。ちなみに「市場環境的なリスク」とは、市場自体の潮目の変化です。人々の関心が大きく変化したり、リーマンショック、……ショックと呼ばれるような劇的変化が起こることを私たちは何度も経験してきました。しかしこうした変化は前もって把握するのがとても困難です。一方「取引上のリスク」とは、予定していた取引先の新店計画が先に延びたり、販促計画が変更になったり、あるいはライバルの活動・動向も商売上のリスクでしょう。しかしこうした不確実性は、市場環境的なリスクに比べると、営業活動の中である程度つかみ取ることができるかもしれません。そう考えると、営業活動から見通しをつかむ、見込(値)を共有することは、企業の持続可能性、リスクマネジメント上一層重要になります。

もし最新=確度の高い見込(値)が一早く社内で共有されれば、生産/在庫管理…各部署が一丸となり、先手、先手で対策を打つことも出来ます。ところがそうした変化がどんなタイミングで把握できるのか、あるいはどんなコントロール・働きかけが可能かは、それぞれの会社、ビジネスによって千差万別です。また素早く状況変化を共有するには、見込情報を共有する仕組みが自社の業務にフィットしていなければなりません。そのため汎用パッケージ化しにくい⇒最適なパッケージが見当たらないといった事情も、販売見込や在庫見込の社内共有にエクセルが多用されている一因かもしれません。

手早く見込を共有する
見込情報を共有する仕組みが自社の業務にフィットした仕組みであること!

一方で見込値は確定した実績とは異なり、営業担当者の「主観判断=意思入れ」に基づく数字なので、不確実性、恣意性も少なからず含まれています。

例えば…「来月の売上は思ったより好調そうだ。でもそのまま見込として登録したら、苦戦している他部署の予算までこっちへ廻されるかも…結果的に上振れなら文句は出ないだろうし… ここは少なめに見込を報告しておこう…」 あるいは逆に、ノルマのプレッシャーに耐えられず、とりあえずミーティングでは「最大限の希望的観測」を見込値として報告してしまう… そんなことは日常的に起こります。人間のすることですから、さまざまな思惑があるのは致し方ありませんが、見込値は在庫数量の管理や資金計画に直結する経営の基盤情報。その信頼度は経営リスクに直結します。

計算在庫/販売見込・入荷見込画面
「販売見込」は計算在庫の計算の基礎

果敢にビジネスの成果を追求する営業活動と、営業状況を共有するために見通しを冷静に数値化する作業は別物です。でも同じ人間が(営業活動の)進行中に、果敢さと冷静さを同時に求められること自体、複雑この上ない仕事です。昔読んだ推計学の本に「複雑なものはバラせ」というフレーズがありましたが、やはり複雑な問題は分解して対応するのが合理的な方法です。見込値はまさにこれが当てはまりそうです。

見込値の登録は、①重ねてきた営業活動の成果を表明するという面と、②在庫や資金計画の基礎となる出荷予定の登録という二つの側面があります。これを同じ人が同時に担うのでややこしくなりますが、後者の②については将来の実績値をより正確に予測=見込値として把握することが、最良活動(ベストプラクティス)であることは明らかです。であれば最良活動を示す数値を用意し、評価基準として各担当者と共有すべきかもしれません。

信頼度の集計画面
実績/見込値のパーセントを、見込登録時期、新規/継続/復活ごとに集計

極論すると営業活動の成果は担当している市場・取引先(好調な市場・顧客を担当すれば自ずと営業成績は上がる…)に左右されますが、見込値の信頼度はある意味でスキルに直結する評価指標かもしれません。なおかつ見込値の信頼度が向上すれば、在庫管理の大きな手掛かりになりますし、予算未達リスクについても、これまでより一歩手前で対策が打てる可能性が出てきます。ちなみに①についてどう評価するかは、企業毎にいろいろな考え方があると思います。個人的には、結果はもとより「より汗をかき、より課題突破のための知恵を出した人」が評価されるべきと考えています。これについては次回以降「予算達成を当たり前に」の中で考えてみたいと思います。

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